遺言の訂正や書き直しはどのように行いますか?
遺言の訂正や書き直しの方法について、自筆証書遺言書と公正証書遺言書で違いはありますか?
はい、あります。
自筆証書遺言での書き直しと、公正証書遺言での書き直しでは、その方法が異なります。
そのため、方法を間違えないように注意する必要があります。
自筆証書遺言の書き直しはどのように行いますか?
自筆証書遺言の書き直しは、以下の4つの手順を踏んで直す必要があります。
① 訂正する場所を指示すること
② 「~」と変更するという旨を記載すること
③ 署名をすること
④ 変更の場所に押印すること
「①訂正する場所を指示すること」とは具体的にどのように指示をすればよいのでしょうか?
二重線や×印を用いて訂正を行います。
後述するように、訂正の箇所があまりにも長くなる場合には、裁判所の判断が必要になる場合がありますので、書き直すことも考慮に入れると良いでしょう。
「②「~」と変更するという旨を記載すること」とは、具体的にどのように書けばよいのでしょうか?
「~」の部分には、変更後の内容を具体的に書く必要があります。
自筆証書遺言書では、遺言者様の意思が明確に表れている必要がありますので、変更の指示と変更後の内容と「変更する」という意思が明確に表現されている必要があります。
「③署名をすること」とは、具体的にどのように行えばよいですか?
訂正箇所に近い行間や余白に、遺言者様の名前を記載することで足ります。
自筆証書遺言の書き直しに関して判断した判例等の具体例を教えてください
遺言書の書き直しに関する判例をご紹介します。
書き損じた文字を抹消した上、これと同一又は同じ趣旨の文字を改めて記載して遺言書を完成させたが、訂正の方式に違反していたという事案について、最高裁判所は「自筆証書中の証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については、たとえ同項所定の方式の違背があつても遺言者の意思を確認するについて支障がないものであるから、右の方式違背は、遺言の効力に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である」と判断しました(最判昭56年12月18日)。
この判決は、訂正の方式に間違いがあっても、遺言書全体の記載内容から見て、書き損じの部分が明らかに誤記である場合には、訂正の方式に違反していても遺言書を全体として無効とすることはできないと判断しました。
この判決を見ると、遺言書の訂正の方式はそこまで厳格に捉えられていないと誤認してしまいそうですが、全体として「明らかな誤記」でない限り遺言の効力に影響を及ぼしてしまうとみる余地があるため、訂正の方式を正しく履践することが一番重要なのです。
自筆証書遺言に添付した自筆でない財産目録(民法969条2項)も同様の方法で訂正や書き直しができるのでしょうか?
はい、できます。
自筆でない財産目録も遺言書と一体となって、遺言者の意思を反映する書面である以上、自筆証書遺言の本文と同様の方法で訂正や書き直しをすることができます。
もっとも、遺産目録を付け替えるという方法による場合には、注意が必要です。
遺産目録の付け替えを行う際には、変更前の遺産目録と変更後の遺産目録を一緒に添付して、変更前の遺産目録には「変更前」と記載し、署名押印を行い、変更後の遺産目録には「変更後」と記載し、署名押印を行うようにしましょう。
このような方法とらなければいけない理由としては、以下のような場合が想定されています。
例えば、「別紙遺産目録」を付け替える場合に、変更後の遺産目録を「別紙遺産目録2」として添付した場合、裁判所等の判断機関からすると、「別紙遺産目録」が無いにも関わらず「別紙遺産目録2」だけがあることになり、偽造変造の可能性が出てきてしまうのです。
そのため、変更前の遺産目録と変更後の遺産目録を一緒に添付して、変更前の遺産目録には「変更前」と記載し、署名押印を行い、変更後の遺産目録には「変更後」と記載し、署名押印を行うようにしましょう。
なお、「別紙遺産目録」を「別紙遺産目録」に変更する場合には、最初から有効な遺言書とみる余地があるとされていますが、上述の方法の方が変更を明確にできるため、確実な方法といえます。
ご不安な場合には、遺言書の書き直しか、又は専門家に相談するのが良いでしょう。
公正証書遺言の書き直しはどのように行いますか?
公正証書遺言の書き直しや訂正には大きく分けて3つの方法があります。
① 新しく公正証書遺言書(自筆証書遺言も可能)を作成する。
② 一部の修正であれば「更正証書」、「補充証書」の作成を行う
③ 誤記があれば誤記証明書の発行を依頼する。
①の方法について、2つの遺言書が存在する場合には、原則として、後の日付による遺言書が優先することになりますので、遺言書の内容に大きな変更を加える場合には、①の方法による作成を行うのが良いでしょう。
なお、①に記載のとおり、自筆証書遺言によることもできますが、対立が生じる可能性が否定できないため、公正証書遺言によることをおすすめします。
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